戸籍書類や免許証には「ふりがな」無し
各種申込書の氏名の記入欄には、ふりがな欄があることが多いので、普段あまり気にされていないかと思いますが、戸籍関係の書類や運転免許証にはふりがながないので、外国語への翻訳を依頼するときに注意が必要です。
フリーランスの翻訳士はその問題性がわかっているので、お名前の読み方をお客様にお聞きしますが、外国の翻訳会社に依頼される場合は、翻訳会社は窓口となるだけで翻訳業務はフリーランスに発注しますので、お名前の読み方の連絡がスムーズにいかないこともあります。
最悪のパターンは、お名前の読み方に対する回答が得られないのに、翻訳会社が「できる範囲で翻訳して」というような指示をする場合です。はっきり言って困ります。翻訳士としては、読み方に対する注意書を翻訳欄外に入れておくのが精一杯です。そして納品後しばらくして、「お客様から間違いがあったと指摘されたから早急に訂正して送って」と言われたこともあります。
「間違い」とはなんのことやら。お客様もきっと「間違い」とはおっしゃっていないはずです。ただ読み方が違っていただけで・・・
外国語翻訳の場合は、お名前の「ふりがな」だけでは不十分
フランス語への翻訳の場合は、お名前のふりがなだけでは不十分なことがあります。特に、翻訳をフランスのお役所に提出して証明書等を発行してもらう場合は、お名前のアルファベット表記がパスポートと同じでないと後で困ることがあります。
例えば「大島」様。Oshima様と書かれている場合もありますし、Ooshima様と書かれている場合もあります。
「伊藤」様なら、Ito様、Itou様、Itoh様があります。
アルファベット表記のお名前をフランス人が読むと・・・
わさび(山葵)は、今ではフランス人の誰もが知っている薬味ですが、たいていのフランス人は「わさび」とは発音しません。「わざび」です。ローマ字だと「Wasabi 」と表記され、「S」の後に母音があるので「Z」発音になってしまうからです。
ぼんさい(盆栽)の場合はBonsaiで「ぼんざい」と発音されています。
「Kurosawa」様は「くろざわ」様。
母音が並ぶと更に私たちには予想できない読み方をされてしまう可能性が高いです。
「井上Inoue」様は、おそらく「いぬう」様?
ヘボン式ローマ字の「ちChi」も要注意です。フランス人は「Chi」は「し」と発音します。
あまりにも予想外の発音になっていると、フランス人が自分の名前を呼んでいるのに気が付かないことがあるので、気を付けてくださいね。
御祖父母様の名前の読み方がわからないことも
戸籍書類にはお名前の読み方が記載されていませんので、ご家族であっても2世代ぐらい前の方のお名前の読み方が後世に伝わっていないこともあります。つまり、現段階では読み方が家族の間で当然のこととして知られていても、数世代すると忘れられてしまうことも考えられます。
将来の世代のために、何かの形で記録されておいてはいかがでしょうか?
また、今は戸籍はデータ化されて文字も統一されていますが、昔の戸籍は手書のため判読できない文字があったり、現在は使用されていない漢字が使われていることもあります。こうした戸籍は後世になっても読めるよう何らかの方法を導入されるよう期待しています。
市長さんの御氏名
戸籍書類(現在は全部事項証明、個人事項証明)で忘れがちなのが、発行者の氏名の読み方です。区長さん、市長さん、町長さん、村長さん。
書類が発行されてから数年すると途中で選挙があったりして、交代されていることもあるので、読み方を調べることがどんどん難しくなっていきます。
市町村合併で忘れられていく地名
翻訳の際は、本籍地等もお客様にお知らせいただくようにしています。地名は存続している限りはネットで調べることができますが、市町村合併で消滅した地名は、年月の経過とともに情報が減っていきますので、戸籍関係の書類の翻訳に限らず、それぞれの地域の歴史を伝える意味でも、読み方を記録して誰でもが簡単に調べられる仕組みができるよう願っています。
Article rédigé par KYH 記事投稿者:KYH