新型コロナウイルス感染による死亡者数の合計が3000人を超えてしまったフランスから、気づいたこと、気になることをお伝えします。不安を煽るつもりは決してありません。日本でロックダウンを行うかどうかは別として、これまでの他の国での経験(特に失敗や対策不足)から、日本は様々なシナリオを想定して対策を練っておけば、フランスのような危機に陥らなくて済むのではないか、そう期待して情報提供のつもりで書いています。
何か違う日本・・・
政治家たちとマスク
3月31日に東京で新たに78人の感染者が確認されたという報道で、小池都知事がレポーターたちに状況を伝えている様子で、これは間違い探しか?と驚かされる場面がありました。
- マスクをはずす時にマスクの表面に触った
- はずしたマスクを素手で折り畳み、そのまま持っていた
- マスクの表面に触った手で顔に触れた
フランスのマスク不足とマスクの使用に関して、1週間ほど前にフランス政府報道官が、自分はマスクを使えない、マスクの使用というのは正確な技術的動作であって、使い方がよくなければ逆効果にもなりうる、といった発言をして嘲笑の的になりました。筆者もこの発言には驚かされましたが、この報道官の言っていたことは正しかったのですね。。。
関連の全く無いところでの行動と発言を比較すると誤解が生じてしまうかもしれないので、補足説明します。
関連の全く無いところでの行動と発言を比較すると誤解が生じてしまうかもしれないので、補足説明します。
フランス政府報道官のこの発言の背景には、フランスのマスク不足への大きな不安があります。フランスの場合はマスクが全く足りていなかったので、少ないマスクを医療従事者に提供できるように、一般の人々によるマスクの購入を抑制する、市場から消えたことへの人々の不満を回避する、という意図がこの発言にはっきりと見てとれました。
でも、マスクの使い方が難しいなら、フランスでも日本でも、マスクの正しい使い方・外し方・捨て方を国民に知ってもらえるよう、政治家が率先してテレビやネットでアピールしてほしいと思います。
対人距離は?
レポーターが10人ぐらい都知事を囲んでいて、こういうのを「囲み取材」と呼ぶようですが、一番離れているレポーターでも距離が腕を伸ばしたら都知事に触れるぐらいの距離のところにいました。一番近い場所にいたレポーターはマスクをしていましたが、都知事と腕が振れるほどの場所に位置していました。
「社会的距離の確保(ソーシャル・ディスタンシング)」と呼ばれる対人距離は、フランスの場合は最低1メートルとされていますが、イギリスでは2メートルで、可能な場合は2メートルを取るべきではないでしょうか。
レポーターの皆さま、取材するときは対人距離をとってくださいね。
この都知事への取材とは別に、首相と閣僚(?)がひとつの部屋に集まっている様子が報道されていました。全員大きな肘掛椅子に座っていらっしゃいましたが、隣の人との間隔が狭く、1メートル未満です。
ロックダウンの前を振り返ると
フランスがロックダウンした時の合計死亡者数は150人未満
昨日3月31日にフランスでの死亡者合計数が3000人を超えてしまいましたが、1000人を超えたのが1週間ほど前の3月24日ことで、この急速な増え方は本当に恐怖です。
ロックダウンを開始した時はどんな状況だったのか、今調べてみると開始した日の3月17日で合計148人です。
フランスの増加カーブはイタリアの増加カーブを約1週間遅れで描いていると分析されていたので、フランスでロックダウンが開始されたとき、2週間後にはイタリアで増加がピークに達して収束に向かっていくのかなと少し期待していたのですが、期待は完全に裏切られてしまいました。
集団感染が起きてしまった国とそうでない国とでは、その後の推移がかなり変わってくると思いますが、ほんの少しのことがきっかけで感染爆発が起きてしまうので、本当に注意が必要です。
2週間前の状態に戻れたら、という気持ち
フランスでロックダウンが開始された時は、潜伏期間は最大14日間と言われていることから、2週間後に発症していなければ安心できるような感じがしていました。
現実は、2週間しても感染ピークに達しておらず、病院の飽和状態に応じて患者が他の地域の病院に移送されています。
これを予想できていたらロックダウンになる前の自分の行動は明らかに違っていたはずです。当時の自分は危機感が足りなかったということになりますが、それはなぜでしょうか?自分を含め多くの人々が危機感を持てなかった状況がありました。
なぜ危機感が足りなかったか
死亡率が低い、重症化しやすいのは60歳以上の人という情報:これについては、3月上旬の段階では世界中で同じように考えられていたと思います。今では乳児も10代の少女でも感染によって死亡者が出ていますので、年齢に関係なく誰でも重症化の可能性があることがわかります。
移動によって感染拡大リスクが高まるという認識が不足していた:移動を避けるのは自分が感染しないようにという気持ちはあっても、自分が移動することで他の人の感染リスクを高めるという考えに至っていませんでした。こうして世界各地で買い物パニックが起き、イタリアやフランスでは移動ラッシュもありました。
感染予防対策が足りなかった:「新型コロナウイルス-買い物での感染を予防する」で買い物での感染予防対策についてお知らせしましたが、こうした対策は3月上旬にはありませんでした。世界各地で研究がすすめられ、 表面に付着したウイルスの生存時間が長い(プラスチックやステンレスでは2~3日)ことが知られるようになって、商品などの表面に触れる機会の多い買い物では特に注意が必要だということがわかったのです。
感染拡大と発表される数値について
フランスでは、ロックダウン開始の頃までは、日本よりも検査をしていなかったですし、国によって検査を限定的に行うか、積極的に行うかによって大きな差が出るので、専門的知識のない一般人である筆者は、感染者数の推移のカーブよりも死亡者数の推移のカーブを比較して状況を見るようにしています。
毎日発表される情報だけでは数日間の推移は頭で把握できても、1週間、2週間という期間にどれだけ増加したのか、また、どのように増加しているかわかりにくいので、推移のカーブの方も合わせて見ると理解しやすいです。
日本では移動ラッシュよりも、通勤移動激減が問題になる?
「東京封鎖(ロックダウン)?気をつけてほしいこと」では、イタリアやフランスで起きてしまった移動ラッシュの問題について伝えましたが、東京の場合は、ロックダウンによって都内への通勤が激減した場合に大きな影響が出るかもしれません。
ロックダウンが実施されている間は、地域によっては、在宅勤務の人や休業で自宅待機になっている人で昼間人口が増加することが考えられ、それによって生活必需品などのニーズも増加することになります。それは、販売だけでなく、物流でも製造でも、増加に合わせて対応しなければならないということを意味しています。
また、昼間人口が増えた地域で感染者が急増した場合、特に入院患者が急増した場合に、その地域での医療体制が対応できるかどうかも、事前に把握しておく必要があるでしょう。
人々には具体的な対策と情報提供が必要
ロックダウンの目的と計画が知りたい
ロックダウンによって様々なことが制限されますが、制限というマイナス部分のみが強調されると、最初から精神的苦痛を感じてしまいます。
いろいろな疑問があるのに答えを得られないと不安が強まります。
- なぜロックダウンをするのか
- 目安となる期間と予想される効果はどうなのか
- ピークに達するまでどう過ごしたらよいか
- 病床が足りなくなった場合の対策はどうなっているのか
- ピークに達した後はどうなるのか
ひとりひとりが、今は大変でもロックダウンに協力したら困難を乗り切れる、感染拡大が抑えられるという気持ちになれるよう、目的や対策に関する詳しい説明が必要です。
ロックダウンの時の生活に関する情報
フランスではロックダウンの期間中に外出する時は証明書を携帯しなければなりません。この証明書は国が指定する所定用紙に記入するか、この用紙の内容を自分で手書きをしたもの(プリンターが無い人など)です。許可されている外出理由が記載されており、該当するものを選ぶようになっていますが、最初の所定用紙の外出理由には不明瞭な部分が多く混乱していました。例えば、健康のための散歩やジョギングができる範囲(距離)や時間(長さ)、ボランティア活動などは記載されていませんでした。
改定版が作られ、最初のものよりもわかりやすくなりましたが、人々の疑問については、国や自治体の公式サイトだけでなく、テレビやラジオでも特集を組んでわかりやすく伝える必要があります。
感染拡大が続いている理由に関する情報
ロックダウンから2週間しても感染が拡大し、しかも拡大のスピードが加速している時、なぜそうなるのかという情報が無いので不安になります。
潜伏期間中の人や無症状の人から感染が広がったのでしょうか?
家庭内感染が多いということはないのでしょうか?
精神的負担への対策
ロックダウンが長びくと精神的負担が大きくなります。
- 会社や工場で、あるいは屋外での仕事を継続しなければならない人:職場での感染に対する不安とストレス。
- 介護の必要な人や障害者のいる家庭:普段利用しているサービスの提供が減る可能性があります。
- 小さな子どものいる家庭:外で遊べる機会が減ることによるストレス。
以上はわずかな例に過ぎません。
また、家庭内暴力が増えたという報告があります。
各部門での専門家が協力し合って対策を練っておかれるよう期待します。
フランスでの感染は今週末がピーク?
3月17日から15日間として始まったフランスの全国封鎖は、4月15日まで延長されました。フランスより早くロックダウンを開始したイタリアやスペインの状況を見ても、2週間でピークを過ぎるようには思えなかったですし、「少なくとも」15日間という期間の示し方だったので、延長は誰もが予想していたと思います。
今回も、4月15日までの延長には「少なくとも」がついているので、更なる延長は予想できます。
フランスでの報道を見ると、今週末あたり、つまり4月5日頃にピークに達するかもしれないという見方と、ピークは4月下旬から5月初めになるだろうという見方に分かれているようです。
現段階で感染ピークに達していないのですから、4月5日頃にピークに達しても、4月15日にロックダウンを解除できるような状況になるとは思えません。
感染者数や重症の患者数がフランスのように多くなってしまうと、ロックダウンの効果が出るのが遅くなり、ロックダウンの期間が長くなるということですね。
日本で爆発的な感染が起きないよう祈っています。